研究概要 |
力学刺激を受けた細胞の応答機構として「細胞内小器官によって内部の力学バランスが保たれ,結果として細胞形態変化が生じる」という視点から以下の研究を実施した. 1.マイクロアレイを有する基質を用いた伸展刺激負荷 細胞内に局所的なひずみを負荷するために,微細加工技術を用いてマイクロアレイを有するPDMS膜を作製した.この基質上では焦点接着斑の間のみに選択的に伸展を負荷することができる.このマイクロアレイ膜上に内皮細胞を播種し,繰り返し伸展刺激を6時間まで負荷した.平面膜基質上の内皮細胞に比べ,マイクロアレイ膜上の内皮細胞ではストレスファイバの再構築速度が遅くなった.また細胞はマイクロアレイ間をつなぐように伸展方向に対して直交する方向にストレスファイバを発達させた.これらの結果から細胞は細胞内局所ひずみを感知することが明らかになった. 2.局所力学刺激による細胞の形態および細胞骨格構造変化 予めGFP-アクチンベクターを導入しアクチンフィラメントを可視化した内皮細胞に対して,微細な先端を持つガラスピペットを用いて細胞に局所的な力学刺激を負荷した.その結果,細胞はアクチンフィラメントを発達させながら刺激負荷方向に伸長・配向した.このことから局所的な力学バランスの変化が細胞の形態変化を引き起こすことが考えられた.またこの形態応答メカニズムにおいてチロシンフォスファターゼSHP-2の細胞間隙局在化が関与していることも明らかになった. 3.核の形態変化 内皮細胞に対して,せん断応力,繰り返し伸展および静水圧の異なる力学刺激を負荷し,細胞核の形態変化を調べた.その結果,細胞核はそれぞれの力学刺激に応じて能動的に異なる形態変化を示すことが明らかになった.
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