研究概要 |
力学刺激を受けた細胞の応答機構として「細胞内小器官によって内部の力学バランスが保たれ,結果として細胞形態変化が生じる」という視点から以下の研究を実施した. 1.マイクロピラー基質を用いた内皮細胞の牽引力測定 微細加工技術により作製したマイクロピラーを有する膜基質を用いて,細胞骨格の一つである微小管を破壊した際の平滑筋細胞の牽引力を計測した.また微小管,細胞質,細胞膜を除去したトライトンサイトスケルトンモデル(TCモデル)において牽引力を計測した.その結果,微小管を破壊した場合には平均牽引力は増加したのに対しTCモデルにおいては減少した.細胞の牽引力の発生において細胞骨格の重要性に加えて細胞膜および細胞質を力学要素として考慮する必要性が示唆された. 2.単離ストレスファイバの力学特性に対するカルシウムイオンの影響 平滑筋細胞から単離しかストレスファイバの粘弾性挙動をカルシウムイオン濃度を変化させた溶液中で調べた.カルシウムイオンを含まない溶液中では,カルシウムイオンを含む環境に比べ,ストレスファイバの初期剛性が上昇する傾向が得られた.力学刺激負荷時に生じる一時的なカルシウムイオン濃度上昇がストレスファイバを通した細胞内力学刺激伝達に影響を与えることが示唆された. 3.伸展刺激を負荷した内皮細胞のアクチンダイナミクスの観察 予めGFP-アクチンの遺伝子導入によりアクチンフィラメントを可視化した平滑筋細胞に対して伸展刺激を行った後,FRAP実験によりアクチン分子のダイナミクスを観察した.その結果,伸展刺激負荷20分後で一時的にアクチンターンオーバーが上昇し,その後アクチンフィラメントの発達とともに形態変化を示すことが示唆された.
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