研究概要 |
1. 単離ストレスファイバの力学特性 単離したストレスファイバの力学試験装置を開発し力学特性を調べた.本装置は,顕微鏡ステージ上で2つの対向するマイクロニードルによりストレスファイバの両端を把持して引張り試験を行うものである.ストレスファイバは非線形な変形特性を有し非常に高い伸展性を示すことが明らかになった.細胞内におけるひずみ状態(平均値で平滑筋細胞0.21,内皮細胞0.24)を考慮すると細胞内においてストレスファイバに負荷されている初期張力は平滑筋細胞で平均値で10.0nN,内皮細胞で4.1nNであることが示された. 2. マイクロポスト基質を用いた細胞の牽引力とストレスファイバ収縮力の計測 微細加工技術を用いてマイクロポストの列を作製した。マイクロポストの高さは10μm、直径3μm、中心間距離8μmとした。この上で細胞を培養し細胞の収縮に伴う牽引力をマイクロポストのたわみから求めた。その結果、ストレスファイバによる細胞の牽引力は、約12nNであることが明らかとなった 3. マイクロポストを有する基質を用いた伸展刺激負荷 細胞内に局所的なひずみを負荷するために,微細加工技術を用いてマイクロポストを有するPDMS膜を作製した.この基質上では焦点接着斑の間のみに選択的に伸展を負荷することができる.このマイクロポスト膜上に内皮細胞を播種し,繰り返し伸展刺激を6時間まで負荷した.平面膜基質上の内皮細胞に比べ,マイクロポスト膜上の内皮細胞ではストレスファイバの再構築速度が遅くなった.また細胞はマイクロポスト間をつなぐように伸展方向に対して直交する方向にストレスファイバを発達させた.これらの結果から細胞は細胞内局所ひずみを感知することが明らかになった.
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