研究課題
心臓が統合的(フィジオミック)に機能を発揮するためには、ナノマシンであるアクチン・ミオシンクロスブリッジの形成と解離が協調的に行われることが必要であり、そのためには心筋のすみずみまで酸素を運搬する冠循環が正常に機能する必要がある。本研究では、クロスブリッジのナノ挙動と冠微小循環動態の実測実験を行うとともにシミュレーションにより実験結果を統合的に理解しようとした。アクチン・ミオシンのナノ挙動は、SPring-8の高輝度放射光を用いてランゲルドルフ潅流心(ラット)のX線回析像より解析した。クロスブリッジの形成・解離のうち形成過程は心筋各部で協調的に行われたが、解離過程は心内膜側に比して外膜側心筋で延長を示した。また、筋線維格子間隔は、心外膜側心筋が心内膜側に比して狭く、外膜側心筋繊維が伸延されていることが窺われた。一方、ミクロトレーサーおよび高速ビデオ顕微鏡を用いて冠細動脈血流を可視化した結果、心外膜側では収縮・弛緩期を通して流れがみられるのに対し、心内膜側の血流は拡張期のみに限られ、収縮期には2相性の逆流をみた。そこで、冠血流とクロスブリッジ動態を統合的に考察すると、拡張期における心内膜側の早いクロスブリッジの解離は、冠血管に対するメカニカルストレスの解除を意味し、その流入を促進しうるものと思われた。一方、収縮期のクロスブリッジの動態に貫壁性の差がみられなかったことから、収縮期に心内膜側血流が阻止される主たる要因は、クロスブリッジ形成自身によるアクティブなストレスではなく、左室圧上昇などに伴う局所心筋内静水圧上昇が寄与しているものと考えられた。以上の結果に基づき、心筋収縮・弛緩のミクロモデルおよび毛細管を含む冠血管モデルを構築して、局所心筋のひずみ・応力および冠微小血管動態のシミュレーションを行い、心筋と冠血流動態の基本特性をフィジオミックに評価することが可能であることを示した。
すべて 2005
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