研究概要 |
【目的】大豆タンパク質に脂質代謝改善作用があることは古くから知られている。本研究では大豆タンパク質の長期摂取が運動選手の筋内脂肪量、体組成、筋力、全身持久力へ与える影響について検討した。 【方法】規則的な運動習慣を有し、日常的にプロテインを摂取していない健康な男子大学生を被験者とし、無作為に大豆タンパク群(D群)とカゼイン群(C群)の2群にそれぞれ被験者を分け、2ヶ月間のタンパク質摂取前後の筋内脂肪量、体組成、筋力、全身持久力の値について比較検討した。D群の平均年齢は21±1.2才(n=8)、身長;174cm、体重;69kg、体脂肪率が11.9±4.6%で、C群の平均年齢は20.4±0.7才(n=8)、身長;171cm、体重;68kg、体脂肪率が12.3±5.6%であった。筋内脂肪量の測定にはプロトン核磁気共鳴法(^1H-MRS)を用いて、右足の前脛骨筋(TA),ヒラメ筋(SOL),内側腓腹筋(MG)を被験筋に用い、筋中央部1箇所の1cm^3セル内に含まれる筋細胞内脂肪量(IMCL)を定量した.全身持久力の測定には呼吸代謝装置を用いてトレッドミル走により最大酸素摂取量を測定した。筋力は等速性筋力マシンを用いて下肢(スクワット)・上肢(ベンチプレス)の最大筋力を測定した。体組成の計測は空気置換法により体脂肪率を求めた。 【結果と考察】食事調査の結果、両群ともに調査前後における食事によるタンパク質と総カロリーの摂取量に変化はなかった。体組成と身体特性に変化は認められなかった。両群のそれぞれの筋におけるIMCL量に変化は認められなかった。また、細胞外脂肪量についても摂取前後の値において有意な差は認められなかった。最大酸素摂取量は両群ともに増加を示したが、最大筋力においては変化が認められなかった。以上のことから、二ヶ月間のタンパク質摂取において全身持久力の向上が認められ、有酸素能力改善の可能性が示唆された。
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