研究概要 |
愛媛県四国本島部全域(以下全県)を対象に2年の間隔で2回(2005年9月および2007年8月)行った航空レーザー測距の結果をとりまとめ、全県の森林面積と森林蓄積および期首と期末における蓄積の差として森林の純生長量と二酸化炭素収支を推定した。その結果、それぞれ4,440km^2、1億4000万m^3強、147万m^3/年および49万tC/年となり、いずれも林野庁が京都議定書の森林炭素収支勘定に用いる森林簿の値とは相当の隔たりがあり、人口に膾炙する森林簿の不正確さを実証することとなった。すなわち、森林面積では森林簿が本推定の88%、森林蓄積では同半分強と、特に後者で大幅な過小推定になっている一方、成長量と炭素固定量は本推定の1.3倍と過大推定となっていた。森林面積の食い違いは、航空レーザーが森林化した放棄農地なども森林として勘定しているのに対し、その大半で農地から林地への地目変更がなされていないので、森林簿ではこれらが計上されていないためである。また、こうした森林面積の違いにもかかわらず、森林簿の蓄積があまりにも過小に、生長量や炭素吸収量が過大に現れるのは、林野庁自身が定めた標準伐期齢を超える壮齢の森林を若齢に評価しすぎているということである。 ただし、本推計と林野庁森林簿では森林面積で県土の10%ほどの食い違いがあり、計測年度の設定も多少異なるほか、本推定にもまだ多少の補正が見込まれるので、最終的な比較は多少動くが、上記の矛盾が根本的に解消されるほどではない。前述のように森林簿の精度にはかねてより多方面から疑義が出ているので、これに基づくわが国の京都議定書森林炭素収支勘定には見直しが必要であろうと結論した。
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