研究課題/領域番号 |
17201012
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
花里 孝幸 信州大学, 山岳科学総合研究所, 教授 (60142105)
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研究分担者 |
柳町 晴美 信州大学, 山岳科学総合研究所, 教授 (60174554)
平林 公男 信州大学, 繊維学部, 教授 (20222250)
宮原 裕一 信州大学, 山岳科学総合研究所, 准教授 (80311330)
朴 虎東 信州大学, 理学部, 准教授 (20262686)
豊田 政史 信州大学, 工学部, 助教 (60324232)
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キーワード | 水質汚濁 / 富栄養湖 / 水質浄化 / 湖沼生態系 / 生態系構造変化 |
研究概要 |
諏訪湖では下水処理場の供用が開始されてから20年目になる1999年に植物プランクトンによってつくられるアオコが突然大きく減少した。それとほぼ同時に不快昆虫のユスリカの大発生が無くなった。また、透明度の上昇に伴った水草が繁茂するようになった。これらのことから、1999年には生態系のレジームシフトが生じたと考えられた。しかし、動物プランクトン群集には、そのとき顕著な変化が認められなかった。そこで、1999年の前後10年間の動物プランクトン群集の変化を詳しく解析した。その結果、1999年が大きな変化点になっていることが明らかにされた。この結果、諏訪湖では多くの生物群集が大きく変化したことがわかり、その年が生態系のレジームシフトが起きた年と結論づけられた。水質浄化は植物プランクトンの生産量を減らし、その結果ユスリカや魚の量が減った。ところが、動物プランクトン群集では、むしろ大型動物プランクトンが増える傾向がはっきりと認められた。これは水質浄化によって魚が減ったことによって、その捕食圧から逃れられた動物プランクトン種が増えたためと考えられた。このことから、富栄養湖の動物プランクトン群集の構造と現存量は、餌である植物プランクトンよりも、捕食者である魚によってより強く制御されていることが示唆された。 水草の増加は水質浄化にプラスになると考えられていたが、その分布域が大きくなるにつれて、船の航行の障害になるなど、問題視されるようになった。そこで、水草の繁茂する景観に対して、住民意識調査を行った。その結果、住民には湖水面が見えることが景観的に重要で、それを妨げるほど水草が増えることは好まないことがわかった。また、玉砂利を敷いた所など、人工的につくられた環境でも、水に接することができる湖岸を好むことがわかった。水質浄化の進展と共に考慮しなければならない課題が見えてきた。
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