研究課題
平成18年度は、p53依存性Sチェックポイントの生物学的な意義について解析をおこなった。p53依存性Sチェックポイントは、2-4Gy程度の線量でDNA合成を抑制するが、これは複製フォークの進行速度低下によるものであることは、前年度までに証明した。複製フォークの進行が抑制されることに付随して起こりうる現象として、複製点での姉妹染色分体交換が考えられる。それゆえ、マウス繊維芽細胞にガンマ線照射を行い、姉妹染色分体交換の頻度をみたところ、p53+/+細胞では線量に応じて頻度の上昇がみられたのにたいして、p53-/-では、4Gyまでの線量では頻度上昇がなかった。これはまったく新規の発見である。一方紫外線による姉妹染色分体交換については、すでにほかの研究者が報告しているように、p53-/-細胞のほうが誘発頻度が高かった。従来p53は相同組換えの抑制を行うといわれているが、今回のわれわれの結果はそれと相反するものである。これまでp53が相同組換えを抑制すると報告されていたのは、組換え検出系レポーターを導入して解析した実験の結果であるのにたいして、われわれの今回の解析は、姉妹染色分体間の相同組換えを見ている。姉妹染色分体交換は間違いのない相同組換えで突然変異を起こさないため、ゲノムの守護神であるp53がこの活性をもつことは、きわめて理にかなっている。以上から、p53は、損傷シグナル伝達の下流において、DNA複製に際しての複製フォークの進行を遅くし、姉妹染色分体交換を促進することで間違いのない複製を保証する機構として働いていることが、結論付けられる。
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