研究課題/領域番号 |
17201015
|
研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
大西 武雄 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (60094554)
|
研究分担者 |
大西 健 奈良県立医科大学, 医学部, 助教授 (50152195)
高橋 昭久 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (60275336)
松本 英樹 福井大学, 医学部, 助教授 (40142377)
|
キーワード | 放射線 / アポトーシス / 細胞死シグナル / 生存シグナル / 分子標的 / 放射線増感 |
研究概要 |
目的 放射線照射後に誘導される細胞死/細胞生存シグナル伝達にかかわる増殖因子受容体やその下流の各種キナーゼ(PI3-K、MAPキナーゼ)、Akt、Survivin、ヒートショック蛋白質(Hsp)およびDNA修復系因子(DNA-PK、Rad51、NBS1を標的とする)を分子制御することにより放射線増感が予測できる。本研究では細胞死/細胞生存にかかわるシグナル伝達因子の機能発現を分子生物学的手法(siRNA、シグナル伝達阻害剤)により特異的に樹御し、効率よくアポトーシスを導くことを目的とする。 方法 1.ヒトのp53遺伝子欠損肺癌細胞H1299あるいは舌扁平上皮癌細胞SASに正常型あるいは変異型p53遺伝子を導入し実験に用いた。 2.生存シグナルの阻害剤(PI3-K阻害剤LY294002、MAPキナーゼ阻害剤PD98059およびSB235680)やアポトーシスを阻害するHsp90の機能を阻害するGeldanamycinを処理して放射線/温熱感受性をコロニー形成法で調べた。 3.siRNA (DNA-PK、NBC1、XIAP(Survivinの1種)などを標的とする)をliposomeで細胞内に導入して放射線照射後に誘導されるDNA修復系因子や細胞生存シグナル伝達因子を阻害し、細胞の放射線感受性をコロニー形成法で調べた。 結果 1.LY294002(PI3-K阻害剤)によって細胞のX線/温熱感受性はp53遺伝子型に依存せず増感された。 2.LY294002によってX線/温熱誘導アポトーシスはp53遺伝子型に依存せず増強された。 3.X線/温熱処理後、AktとFKHR(Aktの下流因子)のリン酸化、survivinの蓄積誘導が見られたが、LY294002によりそれらは阻害された。 4.LY294002は温熱によるHSF1のDNA結合活性化およびhsp27、hsp70の蓄積誘導を阻害した。 5.MAPキナーゼの阻害剤であるSB203580とPD98059に温熱増感作用が見られたが、放射線増感作用は見られなかった。 6.Geldanamycinには明らかな放射線および温熱増感作用は見られなかった。 7.NBSIおよびXIAP標的siRNA導入によって放射線感受性は増感された。 8.NBSIおよびXIAP標的siRNA導入による放射線増感率は変異型p53細胞の方が正常型p53細胞よりも高かった。 考察 LY294002はp53非依存的なX線/温熱誘導アポトーシスの増強をもたらしX線/温熱増感剤として有用であること、NBSIあるいはXIAP標的siRNAは変異型p53細胞の放射線増感に有効であることが示唆された。
|