ナノバブルは直径が100nm以下の超微細気泡であり、マイクロバブルを若干の電解質の存在下で圧壊することにより作成することができる。現在、酸素とオゾンの2種類のナノバブルの製造に成功しており、それぞれ優れた工学的応用の可能性がある。すなわち、オゾンナノバブルには殺菌能力、酸素ナノバブルには生理的な活性効果である。通常、気泡は微小になるほど水に溶けやすいため、不安定な存在である。これに対してこれらのナノバブルは極めて長期にわたって水中で存在できる。研究ではその安定性のメカニズムについて検討すると共に、これを工学的に応用するための基礎的な物性を把握した。その結果、以下のことが明らかになった。 ・マイクロバブルの圧壊過程では表面電荷(イオン類)の濃縮が確認された。 ・圧壊が完全に進んでしまうとフリーラジカルを発生することが確認できた。 ・圧壊過程は一時的な小休止を伴う現象であり、これが微小気泡の安定化につながる。 ・電解質の存在下で強制的に圧壊をした場合には、ナノバブルとして長期に安定化する。 ・安定化のメカニズムとしては、表面でのイオン濃縮に伴うsalting-out現象が主体と考えられる。 ・pHを急激に変化させると安定化したナノバブルが不安定となることが起こりえる。 工学的な応用については、酸素ナノバブルによるカイワレダイコンなどの種子の発芽と初期成長に大きな影響が認められた。特に塩分の弊害を強力に抑える効果があった。オゾンナノバブルについては、噴霧上にしても酸化能力が8割程度維持されており、環境殺菌に利用できる可能性がある。また、除臭効果が強力であった。これらの成果は順次にJournal of Physical Chemistryなどに投稿すると共に、実用化を念頭に置いて特許出願につなげている。
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