平成17年度の主な研究目的は、50nmの加工分解能の達成とデバイス加工への応用であり、本研究は計画に従って加工システムと材料との両面から以下のように行った。 ラジカルの拡散の影響とレーザーナノ加工法の加工分解能の関係を調べるため、光硬化性樹脂の温度を低温から高温まで変化させたときの光重合反応の振る舞いを調べた。実験では、窒素冷却型の顕微鏡用冷却・加熱ステージ(LK-600、ジャパンハイテック株式会社)を我々が独自に開発したレーザーナノ加工装置に導入したシステムを構築した。開口数0.55の対物レンズを用いて近赤外フェムト秒レーザー光を光硬化性樹脂SCR-500(JSR(株)製)に集光し、入射光強度一定の元で樹脂の温度を-60℃から80℃まで変化させながら点硬化させた。露光時間が32ms以上の場合、樹脂の温度上昇に伴い硬化スポットのサイズが減少した。これは樹脂の温度上昇によって、ラジカルの連鎖移動反応に伴う重合停止反応が支配的になったためだと考えられ、ラジカルの拡散の影響が加工分解能に影響することが確認された。しかし、実験で検証した温度領域ではいずれの温度下でも、レーザーの照射時間の最適化によって得られた最小の硬化スポットのサイズは約100nmで変化がなかった。この結果は、系の温度は加工分解能には大きな影響を与えないことを示唆している。 また、ナノデバイスの光駆動メカニズムの検証のため、ガルバノミラーセットを用いたレーザー走査システムを構築した。デバイスのレーザー捕捉・駆動のためのレーザー光源とガルバノセットミラーによる高速走査系を備えた光学顕微鏡システムからなり、デバイスの駆動の様子はハロゲンランプの照明とCCDカメラの観察によりビデオレートで観察・記録できる。今後、レーザーナノ加工装置によって作製したナノデバイスを光駆動し、マイクロ/ナノスケールでの力学の解明を目指す。
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