本研究の目的は、室戸沖に設置しているGPS津波計を用いて津波防災に有用な実システムを構築実証することにある。当初の実験システムは船舶による衝突被害を受けて沈没したが、平成20年4月に復活した。これにより、平成20年度には次の成果を得た。 (1)本研究の最大の課題である長基線化について、室戸岬測候所等3か所に設置した基線長の異なる基準局とGPSブイとの測位データから、独自開発した測位コードの有用性を確認した。また、測位アルゴリズムの異なるRTK法では、信頼性が低いデータが発生するタイミングが異なることに着目し、複数のRTK法を用いたハイブリッド化を行い、欠測のほとんどない津波・波浪・潮汐データをインターネットを通じて提供できた。 (2)GPS津波計データは、観測値に基づく正確な津波情報の発信を可能にする。実用化されて全国展開中の国交省港湾局のGPSブイの観測値を気象庁の津波予報に活かすことが平成20年7月から段階的に開始された。これをさらに発展させるための基礎研究として、GPSブイの観測データと周辺の観測機器のデータから、震源域の津波パラメータを再構築し、信頼性の高い津波伝播シミュレーションを再計算する方法を明らかにした。こらには、現状で15分のリードタイムを必要とする。 (3)GPSブイの日常的な利用価値が実用的普及の鍵を握ることになるため、これまでの気象・海象情報のインターネット配信に加えて、周辺地域の漁業振興に資する海水温、流向・流速を、ミニFMを用いて即時発信するシステムを構築した。このシステムにより、災害発生時には、有用な情報収集機器として機能し、電子機器の取扱いに疎い再開弱者でも容易に扱えるFMラジオから津波情報を得ることが可能になった。また、この情報は携帯電話のサイトからも取得できるようにした。このシステムは、GPS津波計を設置した室戸市民の聞き取り調査で好評を得た。
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