研究概要 |
枯草菌は、モデル生物として、ゲノム機能解析が進んでいる。その中で、ゲノム配列決定によって見出された機能未知、あるいは、未解析である遺伝子の破壊株ライブラリーの作成が、研究代表者を中心として行われた(Proc Natl Acad Sci USA,100,4678-4683,2003)。その結果、LB培地・37度という培養条件で、その破壊が致死となる必須遺伝子は271であるということが明らかとなった。その内、機能が不明確なものは22遺伝子であった。興味深いことに、その中の7遺伝子は、分子スイッチとして働くと考えられるGTP結合蛋白質をコードしていた(Microbiology,148,3539-3552,2002)。GTP結合蛋白質には、GTP結合型とGDP結合型の2つの状態があり、それぞれに特異的なeffectorに作用することにより分子スイッチとして働く。GTP-GDP型の変換は内在性のGTPase活性により行われるが、GTPase活性化因子、GTP-GDP交換促進因子等による調節を受けている。従って、GTP結合蛋白質の機能を解明するためには、そのGTPase活性を調節する因子の同定が必要である。本研究では、そうした視点から、枯草菌の機能未知の必須GTP結合蛋白質の研究を進め、YlqF、obg、YsxC、YphCという、4種のGTP結合蛋白質が50Sサブユニットの形成に関与すること、各GTP結合蛋白質の機能は独立していること、Obg、YsxC、YlqFの順に50S前駆体に取り込まれること、YsxCとYlqFのGTPase活性は前駆体で活性化されるのに対して、ObgのGTPase活性は成熟型50Sで活性化すること等を見出し、50Sサブユニットの形成におけるGTP結合蛋白質の機能に関するモデルを提唱した。また、残る3種のGTP結合蛋白質については、Era、YloQが30Sサブユニットの形成に関与することが報告されたが、我々も、YqeHの枯渇下で、遊離の30Sサブユニットが特異的に減少することを見出し、それが30Sサブユニットの形成に関与していることを明確に示した。加えて、枯草菌リボゾームの構成因子の研究の過程で、Znイオンの飢餓に応答してリボゾーム蛋白質の交換が起こるという、興味深い知見を得た。
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