研究課題
本研究は、代表者らが高エネルギー加速器研究機構・放射光研究施設・Advanced Ring(PF-AR)において整備を進めているピコ秒分解X線回折法に基づく分子動画撮影装置を生体分子解析用に拡張し、「タンパク質分子の光誘起ピコ秒ダイナミクスのオングストロームオーダー分子動画撮影装置の開発」を行うことを目的としている。今年度は、まずタンパク質結晶X線回折測定用の検出器としてX線CCD検出器の導入を行い、検出器周辺装置の整備のために設備備品費を充てた。導入したX線CCD検出器は、2□角で0□-40□をカバーし、100Å程度の格子定数を持つ結晶の回折点の間隔を分離するために対角サイズ165mmの検出器面を持つ。また結晶-検出器間距離を分解能と格子定数に応じて変更できる。本装置を用い、実際のタンパク質分子の光誘起ピコ秒ダイナミクスのオングストロームオーダー分子動画撮影のためのテスト実験として、これまでに進めてきた光反応性タンパク質結晶(CO結合型ミオグロビン)を使ったピコ秒分解X線回折測定を開始した。PF-ARから放射されるX線パルスは約100ピコ秒の半値幅を持っている。X線パルス列は、もともと794kHzの繰り返しで放射されるが、試料励起用のレーザーと同期を取るためにX線パルスセレクタと呼ぶ回転式シャッターを使って、レーザーの繰り返しと同じ1kHzまで分周される。つまり、レーザーとX線パルスはある遅延時間を保ちつつ試料に1kHzで繰り返し入射し、そのスナップショットがX線検出器に記録される。遅延時間を系統的に掃引して撮影したスナップショットを時系列に沿って並べることにより、単結晶内の光励起前後のダイナミクスをピコ秒オーダーで分子動画測定することができる。励起光として波長800nmのフェムト秒パルスレーザー光を、測定光として波長0.1nmのX線を用い、時間分解X線回折実験から得られたデータを元にレーザー励起前後のCO結合型ミオグロビンの構造について調べたところ、励起直後にCOの光解離とそれに伴う構造変化が観測された。現在、より詳細な解析を進めているが、我々の装置は測定に必要な仕様を十分満たしていると考えている。また、新たに開始したバクテリアの光合成反応中心結晶を試料とした光誘起構造転移の研究についても、基礎的なX線構造解析と光誘起反応の測定条件検索を開始している。
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Journal of the Physical Society of Japan 75,1
ページ: 011005-1-011005-10
Journal of Physics : Conference Series 21
ページ: 101-105
ページ: 211-215