研究概要 |
世界各国のジーンバンクの保有系統約720のうち,収集地点の明らかなタルホコムギ450系統を,福井県立大学と京都大学で分担して栽培し,若葉よりトータルDNAを抽出した。このDNAは,福井県立大学と京都大学で各1組冷凍保存し,次年度以降の実験に常時利用可能な状態にある。なおこのうち210系統はすでに種子増殖を終えているが,残りの240系統は種子増殖を兼ねるため,次年度の7月にはすべての系統について,将来の研究に必要な種子が確保できる見込みである。 本年度は,タルホコムギの種内分化のプロセスを,分子マーカーを用いて解析する方法を開発することを目的に各種実験を行なった。具体的には,葉緑体DNAのマイクロサテライト・SNP座位にみられる塩基配列の変異を主な対象とし,解析した。またこのデータに基づき,葉緑体DNA変異を用いて,タルホコムギの種内系統分化のプロセスを,系統学的に解析する手法を開発し,成果を論文として公表した。 種子増殖の終わっている210系統については,神戸大学でも秋に栽培を開始し,形態および生理的形質について調査中である(調査の完了は7月)。またこのうち約30系統について,染色体の形態変異の予備的調査を行なったが,従来の報告以上に詳細なデータが得られる可能性が少ないことがわかったため,これについてはさらに研究を継続するかどうか検討中である。 同210系統について,京都大学では人工気象器を利用し播性の調査を行なった。ほとんどの系統は秋播であるが,数系統の春播極早生の系統など多様な変異を確認したので,それらの系統について今後,神戸大学で出穂日などの調査を行う予定である。
|