研究分担者 |
安井 康夫 京都大学, 農学研究科, 助教 (70293917)
宅見 薫雄 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (50249166)
松岡 由浩 福井県立大学, 生物資源学部, 講師 (80264688)
山根 京子 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 助教 (00405359)
笹沼 恒男 横浜市立大学, 木原生物学研究所, 助教 (70347350)
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研究概要 |
タルホコムギにおいて出穂開花時期に幅広い変異が認められたので,210系統の開花日数変異データと各系統の採集地点の気候データを使い,開花日数変異に影響を及ぼしている環境要因の推定を試みた。重回帰分析を行なったところ,タルホコムギの分布域の東部(トルクメニスタン以東)では,冬期気温が開花日数変異に大きく影響していることが分かった。これに対し分布域の西部(トルクメニスタン以西)では,日長が開花日数変異に影響する主要因のひとつと推定された。これらの結果から,タルホコムギの開花日数変異は,分布域の東部と西部で異なる遺伝的メカニズムを通じて進化したと考えられる。また見出された春化要求性を失った系統のうち20系統で,コムギの春化要求性を制御するVrn-1座について塩基配列を決定したところ,イランの系統に最も広い変異が認められたが,それ以外の地域の系統では顕著な遺伝的変異がみられなかった。 同様に乾燥耐性にも幅広い変異が認められる。この乾燥耐性の変異にはABAへの感受性の関与が示唆されるので,乾燥とABAの両方に応答する転写因子WDREB2とWDBF1をコードする2つの遺伝子,及びその下流に位置する遺伝子Wcor615についてタルホコムギのゲノム配列を単離し,その構造を決定した。分布域を網羅する30系統のタルホコムギについて,これら3遺伝子座の塩基配列を決定したところ,Vrn-1座の塩基配列で作成した系統樹とは異なった種内分化パターンを示した。このことから,対象とする遺伝子によってタルホコムギの種内分化は,異なったパターンを示すことが明らかになった。 またタルホコムギ近縁種を対象に,核および葉緑体の塩基配列による多様性解析を試みた。いずれの場合も効率よく解析を行うことが出来たので,それらの結果について学会発表を行った。
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