研究課題
東アジアの瓦研究は、日本の飛鳥・白鳳期を例にとってもいまだ文様論が主体であり、製作技術を含めた総合的な変遷観を確立するにいたっていない。一方、韓半島の瓦の研究も、近年、かなりの進展をみせているとはいえ、製作技術にまで及んだ考察は少なく、中国の南北朝以降の瓦研究にいたっては、ようやく緒に就いた段階である。したがって、系統だった編年案もなく、製作技術に触れた論考も僅少で、いまだ眠ったままの資料も多い。本研究は、こうした現状に鑑み、日本・韓半島・中国のとくに8世紀初頭頃までの瓦について、それぞれの国ごとに文様や製作技術の詳細かつ総合的な変遷観を確立すること、そして国を越えた文様・技術伝播の様相を明らかにし、各国の造瓦組織の実態を解明することを目的にしている。3年目にあたる本年度は、日本の藤原宮式複弁蓮華文軒丸瓦・偏行唐草文軒平瓦およびこれらの系統を引く瓦を取り上げ、畿内および周辺地域の研究者の協力を得て、分析と研究をおこなった。そして、昨年度に韓国・中国の研究協力者とともに立案した計画に基づき、現地での瓦調査を実施した。韓国では、国立扶餘文化財研究所と国立清州博物館・国立公州博物館・国立扶餘博物館・弥勒寺址展示館の協力を得て、百済の熊津・泗〓時代を中心とする瓦の調査をおこなった。一方、中国では、中国社会科学院考古研究所の協力のもとで、漢魏・隋唐洛陽城と隋唐長安城の瓦調査を実施した。これらにより、各々の地域における当該期の製作技術について、一定の見通しを得ることができた。また、中国の研究者3名を日本に招聘して、日本との比較を中心に意見交換をおこなったほか、3年間の調査成果に基づき、中国における造瓦技術の展開をテーマに、北京の中国社会科学院考古研究所でシンポジウムを開催した。
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アジア流域文化論研究 3
ページ: 57-62