本研究は、国際的な人口移動の新たな形態である高齢者および退職者の移住に焦点を合わせることにより、人口移動を「労働力の移動」から「労働力を必要とする人々の移動」という、まったく新しい観点から、移動を、ライフサイクル中に位置づけられる地域間の「財」と「人」の交換と見る視点を形成しようとするものである。 本計画の研究フェーズ((1)高齢者移住の文脈の整理、(2)政策レベルでの対応状況、(3)移住者個人の認識と生活戦略、(4)斡旋業者の事業展開とイメージ戦略、(5)受入社会への影響、(6)人、財貨、サービスの空間移動)のうち、本年度は、(3)、(5)に関しては補充調査を行い、(6)を主体として、全体の成果のまとめを行った。 移動に影響を及ぼす要因として、海外における医療サービスの実態ならびに受入社会の政策的・社会的な対応に関して、マレーシア、インドネシア、タイにおいて調査を行い、介護・医療の体制が徐々に整いつつある実態を把握した。他方、国内における「移住」の主たる対象地域である沖縄における補充調査では、移住者が現地社会に及ぼす正負両面の影響を明らかにした。また、東南アジアとの比較対照のため、ニュージーランド、カナダにおいても、主として長期滞在に関する短期の調査を実施した。他方、連携研究者とのワークショップを開催し、法制面での変化、各地の長期滞在者の実態に関する情報交換、インドネシアの研究協力者による現地社会の対応に焦点を合わせた調査報告と合わせ、成果とりまとめに向けた討議を行った。
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