昨年度実施したインターネット調査のデータによれば、調査対象者が直接は話しにくい「家族」(特に離婚)や「近隣関係」の問題について、先行調査よりも問題経験の回答が多くまた、裁判手続の相手方になったという回答者も先行調査よりも増加した。インターネット調査はまだ得られるデータの代表性に問題があり、回答者に偏りがあることは否めないが、訪問面接法では把握できない問題経験当事者を把握するためには有効な方法であることが明らかになった。 法律相談調査は、全国の単位弁護士会が主催する法律相談センターに来訪した一般市民と法律事務所に法律相談のために初めて来訪した一般市民を対象に調査を実施したものであるが、これらのふたつの来訪者グループ間には興味深い共通性と相違とが見られた。すなわち、いずれのグループも、来訪前には、弁護士報酬がいくらかかるかと弁護士とのコミュニケーションが取れるかについて強い不安を抱いていた。しかし、実際に相談に訪れるきっかけは、前者がインターネットによる情報が最も多く、次いで他に相談するところを知らないからが多く、後者は親族や友人からの紹介が多くなっている。このことは法律相談センターが法律業務拡大のための潜在的可能性を持っていることを示唆している。 3月には、対照的な法制度の利用パターンを示す交通事故と離婚の問題に対象を絞り、聴き取り調査によって得られた知見を外国の知見と比較するための国際研究集会を開催した。 この研究集会参加者の間で、現在、英文による図書刊行の準備を進めている。
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