研究分担者 |
飯田 文雄 神戸大学, 大学院・法学研究科, 教授 (70184356)
遠藤 貢 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (70251311)
出岡 直也 慶應義塾大学, 法学部, 助教授 (50151486)
浅見 靖仁 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 教授 (60251500)
大西 裕 神戸大学, 大学院・法学研究科, 教授 (90254375)
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研究概要 |
「民主主義体制を長期的に持続させる基本的要因は,紛争や抑圧を経験する中で人々民主主義的な手続きを遵守することの重要性や不可避性を学習することである」という本研究の基本仮説を検証するために,まず民主主義的価値規範に注目する政治理論の再検討をおこなった。その結果,民主主義への市民のコミットメントが民主主義の質に与える影響や,そうしたコミットメントが形成されるための条件について,シュンペーターのエリート主義的民主主義論から熟議デモクラシー論まで多様な見解があることが明らかになった。しかし政治理論研究はほとんどが欧米先進国の経験に基づいており,発展途上地域の経験に適用する際には,両者の差異を慎重に考慮する必要溺ある。定量分析においては,昨年までの分析の限界を克服するため,カヴァーする世論調査データの範囲を拡大した。Latinobarometroについては2005年分を,AsiaBarometerについては2004年分を追加した。これらにAfrobarometerを加えた分析によって,本研究の基本仮説はラテンアメリカについてはよくあてはまるが,他の2地域については,まだ民主化が進んでいない国が多数混じっているために,民主主義に対する態度に「手続きへのコミットメント」とは異なる「単なる期待」ぶ含まれていることと,「移行」と「持続」の条件が必ずしも一致しないことが,定量的な検証を困難にしていることが明らかになった。それを補うのが事例研究である。個別の国や地域の事例分析によれば,各国の社会的,政治的亀裂という構造要因にょって紛争や抑圧の経験が民主化過程に及ぼす影響は異なり,そうした経験力民主文化につながらない国もある。本研究の成果は平成19年8月に関かれたアジア政治研究連盟(ACPR)ワークショップと同年10月に開催された日本政治学会と日本学術会議政治学委員会(比較政治部会)の合同セッションにおいて発表された。
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