研究概要 |
(監査調査法) 事件的手法である監査調査法により得られた,賃貸住宅市場における高齢者差別のデータに近隣の福祉・医療施設の立地データを加えて,高齢者差別の要因を分析。その際,観察できるデータのサンプルセレクションバイアスを回避するために,単純なプロビットモデル,条件付ロジットモデル,多項ロジットモデルなど多面的な実証的接近を行うことで頑健性をチェックしている。その結果,高齢者差別は家主の福祉・医療施設への近接状況などに対する配慮よりも,居住期間の長期化を怖れるリスク回避行動に大きく影響されることを実証的に示した。 (実験室実験) 1980年代以降に行われたMarwell and Amesなどの米国での公共財供給実験の手法及びその結果等を概観することで,実際に政策の企画立案過程で実験室実験プロセスを導入するための問題点等の整理を実施し,単純な自発的公共財供給システムの適用可能性を考察。 (社会実験及びパブリックインボルブメント) 公営住宅に関する三位一体改革について,福祉競争の観点から評価を加え,Bohmの実験棟の結果を踏まえながら,リンダールメカニズムに類似した実験的プロセスを導入した調整プロセスが有効であることを示した。 実験室実験結果及びその結果への信頼性の検討を基に,自発的公共財供給メカニズムに関する社会実験的手法の適用を検討。具体的には,民間企業により運営されている公共的スペースへの支払い意思額アンケートを実施。その際,アンケート対象者の属性による支払い意思額への影響を排除するために,対象者を,支払いインセンティブ,ナッシュ的調整の可否という点において異なるグループにランダムにアサインする手法を採用。これらのデータを基に,家計の自発的公共財供給メカニズムにおけるナッシュ的行動の有無,ファンドレイジング手法の効率性等について検討を加えた。
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