研究課題
今年度は東京で3回、千葉で1回、滋賀で1回の研究会を精力的かつインテンシヴにもった。とくに東京と千葉での3月の研究会にはドイツから研究協力者のW.アーベルスハウザー教授を招聘し、シンポジウムとセミナー形式によって2回の研究会を実施した。各メンバーの研究課題にそくして実績を記せば以下の通りである。雨宮昭彦は、単著『競争秩序のポリティクス』を公にして、戦間期における管理型自由主義市場経済の生成過程を大恐慌以降のドイツそくして跡づけ、本科研費テーマの基本線を明らかにした。柳澤治は、ナチス経済政策の戦時体制下日本への影響を「経済新体制」について検討した。田野慶子は、1935年にドイツで成立したエネルギー産業促進法を取り上げ、電力産業の集中化・合理化とその背後にある公共財と自然独占に関する経済政策思想との関わりの考察から戦後への連続性の手がかりをえた。三ツ石郁夫は、30年代ナチス金融政策における国有化回避と個人動機など自由主義視点の台頭を指摘するとともに、貯蓄銀行における預金量増加と有価証券購入によって、短期債務を整理して長期金融への転換を明らかにし、従来の研究史を批判した。山崎は、国民更生金庫・戦時金融金庫の内部資料を利用して、戦時期の企業整備政策と重要産業への特殊資金融資の実態を解明した。矢後は、ヴィシー体制がナチスドイツの要求に応じながらも、国民経済を持続可能にするための諸制度を模索し、そこには戦後へと連続する生産性の認識が現れていたことを確認した。アーベルスハウザーを招聘しての研究会では、現代ヨーロツパが自由主義とコーポラティズムとの路線闘争にあること、および西ドイツの戦後再建においてマーシャルプランと社会的市場経済の役割を相対化するとともに、経済制度的連続性の視点を導入する必要があることが強調された。
すべて 2006 2005
すべて 雑誌論文 (8件) 図書 (1件)
彦根論叢 第358号
ページ: 1-18
戦時日本の経済再編成(原朗編)(日本経済評論社)
ページ: 1-35
ページ: 219-256
明治大学社会科学研究所紀要 44巻・2号(再校済み)
公共研究(千葉大学公共研究センター・21世紀COEプログラム) 2巻3号
ページ: 70-103
日本史講座第9巻(歴史学研究会ほか)(東京大学出版会)
ページ: 213-241
史学雑誌(2004年の歴史学界-回顧と展望-) 114編第5号
ページ: 378-381
20世紀ドイツの光と影(八林秀一, 鎗田英三他編)(芦書房)
ページ: 228-235,236-246,247-254,315-323