本年度は、65歳以上の高齢ドライバー27名(平均年齢73.1歳・レンジ65〜80歳)に対して、教習所走行コースでの運転行動と日常場面での運転行動を記録し、教習所コースでの指標が日常場面での運転行動とどの程度関連しているかを明らかにした。実施手続きとして、従来より本研究で用いているセンサー付き運転行動記録装置を車両に設置し、運転行動の分析を行った。教習所走行調査では、所定の走行コースを練習走行1回、本走行2回走行した。日常走行調査では、調査対象者の自家用車に機材を取り付け、3日間所外の運転を記録した。行動指標として、確認回数や速度を用いた。研究の結果、日常走行と教習所走行の確認回数の相関が有意(p<.01)であり、教習所で左右の確認回数が多い者は日常走行での右左折時にも確認回数が多いという結果であった。速度については、日常走行の交差点通過時走行速度と教習所内の交差点右左折時最低速度には、有意な差はみられなかった。速度行動については結果が出なかったものの確認行動については結果が出ており、今後は、教習所走行のデータを活用し、高齢者の行動特性を明らかにする予定である。 また、ハイビジョンカメラを用いて、交通状況を撮影し、ハザード知覚実験用の刺激場面、12場面を作成した。さらに、顕在的ハザード場面(目に見えている交通参加者・対象者そのものが危ないと予想されるハザード)、行動予測ハザード場面(これから取る行動によって危険の伴うと予想されるハザード)、高齢者が苦手とする潜在的ハザード場面(死角などの隠れた危険対象を含む場面)に類型化した。予備調査として、若者ドライバー20名に対して、ハザード知覚実験を実施した。今後、場面数を増やすとともに、高齢者のサンプルに対して、実験を行うことで、高齢者の特性を明らかにする予定である。
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