超新星爆発はひとつの銀河あたり数十年に一度と見積もられているが、宇宙のいたるところで過去におきた超新星爆発にともなうニュートリノ(超新星爆発を起源とする背景ニュートリノ)が宇宙に漂っていると理論的には考えられているが、実験的にはまだ観測されていない。スーパーカミオカンデはその第1観測期間(1996年-2001年)に背景ニュートリノの探索をおこない、理論予想値の3倍から同程度のレベルの上限値を与えている。観測のバックグラウンドとなった現象は大気ミューニュートリノがチェレンコフエネルギーしきい値以下のミュー粒子を発生し、電子に崩壊する現象であった。このバックグラウンドは酸素原子核との反応が主であるため、反応時のガンマ線を捉えることによって軽減することができると考えられる。これに対して背景ニュートリノの信号は反応の際に中性子を発生するため、それを同期信号として捉えることができれば信号を同定することができる。スーパーカミオカンデの電子回路は現象の近傍1マイクロ秒しかデータを取り込めないためにそれをおこなうことが不可能であった。本研究では、これらの特徴を用いて背景ニュートリノを捉えることを目指す。本年度は、新たな電子回路を開発し、バックグラウンド現象のガンマ線から(これは主となる現象の数マイクロ秒前におこる)中性子による同期信号まで(これは主となる信号の数100マイクロ秒後におこる)の広い時間範囲のデータを収集できるチップを開発した。また、全増倍管の信号を同期して取り込むことができるようにクロックモジュールの開発、それを各電子回路に分配するための回路も開発した。スーパーカミオカンデは2002年から2005年まで光電子増倍管の数が半数しかなかったが第2期としてのデータが取得された。そのデータを用いた背景ニュートリノ探索も行った。
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