研究概要 |
第3年度である本年は第2年度に引き続き,超高速電子スピンの直接的かつ全光学的検出に取り組んだ。この目的のために3色のナノ秒レーザーと2色のフェムト秒レーザーを組み合わせた実験を実施し,超高速電子スピンの実時間観測の再現実験に成功した。しかしながら,以前実施しかナノ秒レーザーの偏極スキームでは問題にならなかった中性原子の絶対数の不足およびフェムト秒パルスのパワー不足がS/N比の良い信号を得るに当たって大きな問題になっていることが明らかとなった。フェムト秒パルスのエネルギーを増大させるのは容易ではないが,中性原子の絶対数を増やすには,原子発生源をアプレーションからるつぼ方式に変えれば良く,今後はるつぼ方式に切り替えて実験を進める事とする。これによって,原子数が5倍程度は増えることが予想され,レーザーパワーの増大なくともS/N比の十分な信号が得られると期待される。 理論については,核スピン偏極を実現するスキームを独自に考案し,解析を行った結果,数kV/cmの静電場を原子に印加することにより,ナノ秒オーダーという,従来知られている光学的なスピン偏極手法よりも3桁ほど短い時間スケールで高偏極を実現できることを示し,国際会議及び論文発表した。達成偏極度は核スピン1/2のアルカリ土類金属原子については約90%,核スピン3/2のアルカリ土類金属原子については60%であった。さらに,核スピン5/2および7/2の場合についても解析を進め,これら核スピン値の大きな場合においても20-30%の偏極度を得ることが原理的に可能であることを明らかにした。
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