重力波は、アインシュタインの一般相対性理論によりその存在を予言された光速で伝わる時空のひずみであるが、未だ直接検出はなされていない。そこで本研究では、超高周波帯(1MHz〜100MHz)の重力波検出を目指して、シンクロナス・リサイクリング干渉計の開発と超高周波重力波源の理論的探索と観測を行なっている。平成20年度の実験・理論における成果はそれぞれ以下の通りである。 [実験]超高周波重力波検出器にとって、将来的に感度を高める上で問題となるであろう、鏡の変位雑音を低減するための全く新たな手法「レゾナント・スピードメーター」を考案した。これは、従来のシンクロナス・リサイクリングの光共振器部を正方形状に配置することにより、ある特定の周波数に対して重力波信号は増幅されるが、鏡の動きはキャンセルされるような構成になっている。我々は、レゾナント・スピードメーターのテーブルトップ実験を行い、この干渉計の動作を世界で初めて成功させ、その原理を検証するため、擬似重力波信号と鏡の変位信号に対する検出器の応答を測定した。 [理論]素粒子の標準モデルでの相対論的自由度の温度依存性も正確に考慮したインフレーション起源のストカスティックな重力波のスペクトルの計算をさまざまなインフレーションモデルと再加熱温度について行った。DECIGOによる再加熱温度の制限を評価しgravitinoやmoduliの質量の制限について議論した。
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