研究分担者 |
杉崎 満 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (20360042)
藤井 律子 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 博士研究員 (80351740)
鈴木 正人 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 講師 (70254381)
南後 守 名古屋工業大学, 大学院・工学研究科, 教授 (90109893)
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研究概要 |
光合成細菌の光合成系は,自然が創造した超高速かつ高効率な光エネルギー変換機構を解明するための本質的なバイオナノデバイスであるばかりでなく,その機構を解明することは太陽光エネルギーの有効利用と言う観点から眺めた場合,人類の存亡に関わる根源的な問題解決に向けての急務な研究対象である。光合成初期過程の機能発現には,LH2,LH1と呼ばれる2種類のアンテナ色素蛋白複合体と光反応中心複合体(RC)の合計3種類の色素蛋白複合体が関係している。本研究では,天然由来の色素蛋白複合体及び精密有機合成の技術を駆使して色素構造を改変した人工の色素蛋白複合体を脂質二分子膜に任意の比率で自己集積した試料を対象にして,電子顕微鏡及びAFMにより膜内での色素蛋白複合体の超分子配列の確認を行いながら,極限の空間及び時間分解能を有する時間分解顕微分光計測を実現し,適用することにより,光合成初期過程の実空間・実時間計測を達成することにより,世界にさきがけて,個々の色素蛋白複合体間のエネルギー伝達と位相緩和のメカニズムを解明することを目的としている。研究初年度に達成した成果は以下のとおりである。(1)世界にさきがけて,異種の光合成細菌から単離生成したLH2およびRC-LH1複合体を脂質二重層膜に任意比率で再構築することに成功した。LH2とRC-LH1の比率を変えることで,RC-LH1が最密充填構造を持つ配列から正方格子状配列へと変化する様子を透過型電子顕微鏡を用いた観測により決定した。また,人工光合成膜内においてLH2からLH1へのエネルギー移動を確認した。(2)10フェムト秒を切る超高速レーザー分光計測装置を開発し,光合成色素カロテノイドの光励起後の極初期緩和過程を分子の固有振動をも時間分解できる精度で実時間観測した。コヒーレント振動が励起後の時間に応じてその振動数を変化する減少を発見した。また,カロテノイドのS2励起状態のフォトンエコー信号を初めて実時間で観測した。(3)顕微分光計測装置の基幹となる,共焦点顕微鏡の設計と発注を行い,顕微装置を導入した。次年度,性能の最適化と時間分解計測装置との融合を図る予定である。
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