研究分担者 |
杉崎 満 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (20360042)
藤井 律子 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 博士研究員 (80351740)
鈴木 正人 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 講師 (70254381)
南後 守 名古屋工業大学, 大学院工学研究科, 教授 (90109893)
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研究概要 |
(1)光合成系における超高速・高効率エネルギー伝達とコヒーレンスとの関係を解明するために,β-カロテンの縮退4光波混合実験を行い,3パルスフォトンエコー信号を観測した。光源には,我々の研究室で開発した,非同軸型光パラメトリック増幅器(自己相関幅Δt〜11fs)を用いた。試料の吸収端近傍で測定したフォトンエコー信号には,時間原点付近に現れる強い信号に続き,約20〜30fsの周期を持つ,複数の成分からなるコヒーレント振動が明瞭に観測された。カロテノイドの緩和過程を表現する適切なモデルを仮定し,インパルシブ極限において計算を行った。時間原点付近におけるスパイクやそれに続くコヒーレント振動の様子など,実験と計算との結果は非常によい一致を示した。コヒーレント振動の緩和時間は,ほぼS_1状態の寿命に等しく,カロテノイドは励起状態においては,十分に系のコヒーレンスが保たれ,エネルギーの損失が抑えられていると考えられる。 (2)脂質(Egg PC)にLH2,RC-LH1等の膜蛋白質を様々な割合で再構築する手法を確立した。Egg PCにRhodopseudomonas (Rps.) viridisのRC-LH1コア複合体を再構築した膜(人工光合成膜)及びRps.achidophilaのLH2アンテナ複合体をも共に再構築した天然にはありえない組み合わせのヘテロ名光合成膜蛋白質を持った人工光合成膜の電子顕微鏡観測を行うことに成功し,LH2アンテナ複合体のRC-LH1コア複合体に対する量比を増やしていくと伴に膜をフーリエ変換して得られる膜内の繰り返し配列が三角格子から正方格子へと変化することを発見した。フーリエ像の繰り返し距離の解析より、前者は13.5nmのコア複合体の配列,後者は8nmのLH2複合体の配列であることがわかった。また,近赤外にあるコア複合体からの発光をInGaAs検出器を用いて測定することにより,異種の光合成細菌から抽出したLH2アンテナ複合体からコア複合体へのエネルギー伝達が確かに行われること、またコアに対するLH2の量が増加するのに比例してコア1個当たりの蛍光量が増加することを世界で始めて明らかにした。電子顕微鏡観測より得られた配列の情報と,吸収・蛍光・蛍光励起スペクトルの情報より、二次元膜内におけるLH2からコア複合体へのエネルギー伝達モデルを作成し,シミュレーションを行った。
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