研究課題
本研究では空間分解核磁気共鳴法により異方的超伝導磁束状態における特異な「渦糸芯(コア)の電子状態」を解明し、準粒子の構造に依存して現れる新奇な超伝導状態を明らかにすることを目的とす。このため、a)強相関系超伝導体の磁束量子状態で渦糸コアの荷電状態を検証し、その特異な電子状態の起源を明らかにすること、b)渦糸状態で空間的に分布する核スピン緩和時間を測定することにより、渦糸コア内の局所的電子状態の構造を捉え、磁束コアにおける反強磁性磁気秩序を検証しその起源を解明すること、c)Pauli limitを超える強磁場のもとで超伝導秩序波動関数の空間変調を伴うFFLO(Fulde-Ferrel-Larkin-Ovchinnikov)状態を検証し、特異な超伝導状態と磁場誘起磁気相との相関を明らかにすることを重点的な課題とした研究を遂行した。本年度は、上記c)の課題を重点的に取り上げるため、現有するスーパーヘテロダイン方式の位相コヒーレント・パルスNMR装置と高分解能超伝導磁石(14T、10^<-5>均一度)を組み合わせ、極低温領域でのNMR測定系を整備した。これにより、重い電子系超伝導体CeCoIn_5に対してInサイトおよびCoサイトのNMRを100mKに至る極低温で測定し、新しい超伝導相でNMRスペルトラムの特異な温度変化を観測した。この新しい発見は、空間変調する超伝導秩序変数の節で生じるH_<rf>の侵入の増大と、空間分布する超伝導エネルギーギャップによるKnight shiftの変化を取り入れたNMRスペクトルのシミュレーションによって理解することが出来た。このことはCeCoIn_5で出現する新しい超伝導相が空間変調を伴うFFLO相であることを微視的な観点から初めて検証を示しており、この成果はいくつかの原著論文と解説として公表した。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (5件)
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