研究概要 |
1.TlCuCl_3における磁場誘起相転移の磁場と相転移温度の関係を希釈冷凍機を用いた極低温磁化測定で詳細に調べ,相境界が冪乗則で表され,臨界指数がマグノンのボース・アインシュタイン凝縮(以下ボース凝縮と略す)の理論から導かれる値に一致することを示した。TlCuCl_3の熱膨張の実験を行い,熱膨張の磁場及び温度依存性がボース凝縮の立場からよく説明できることを示した。 2.TlCuCl_3とKCuCl_3においてギャップが静水圧を加えると減少し,ある臨界圧力で反強磁性状態に相転移することを磁化測定と中性子散乱実験で発見した。この圧力誘起量子相転移は,スピンギャップ磁性体では初めて観測されたものである。ギャップの圧力依存性と臨界圧力以上で起こる反強磁性相転移温度の圧力依存性を詳細に測定し,いずれも圧力の冪乗則で表されることを示した。また臨界圧力では磁化が磁場の3乗に比例することが理論的に示されているが,これを検証した。この量子相転移は,圧力によってダイマー内の交換相互作用が小さくなり,ダイマー間の交換相互作用が大きくなるために起こることを磁化率の解析から示した。 3.スピンギャップ系TlCuCl_3に非磁性不純物を入れた系TlCu_<1-x>Mg_xCl_3において磁場中比熱測定と中性子散乱実験を行い,不純物誘起反強磁性相が磁場誘起反強磁性相に相転移を経ずに連続的に移り変わることを実証した。また,TlCu_<1-x>Mg_xCl_3とKCu_<1-x>Mg_xCl_3において圧力下磁化測定を行い,不純物誘起反強磁性相転移温度が圧力によって増加することを見出し,これが不対スピン間に働く有効交換相互作用がギャップの減少によって増大したために起こることを示した。また,不純物誘起反強磁性相が圧力によって誘起される一様な反強磁性相に相転移を経ずに連続的に移り変わることを実証した。 4.スピンギャップ系Ba_3Mn_2O_8の磁場誘起相転移を強磁場比熱測定で詳細に調べた。
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