研究概要 |
ナノ極限環境で,次元性や相関を制御した4Heおよび3Heの新規量子流体を実現し,超低温での量子凝縮と基底状態を研究してきた。4Heについては,Na-Yゼオライトのナノケージに閉じ込められた量子クラスターの可能性がある吸着量・温度領域を決めた。1次元と3次元ナノ多孔体では,それぞれ温度フォノン波長が孔径や3次元周期よりも十分長くなる基底状態を実現して,それぞれ特徴のある超流動状態を観測した。3次元ナノ多孔体では比熱ピークと同じ温度で超流動のオンセットを振れ振り子で観測し,超流動に伴う振り子の吸収は見られず,3次元長距離超流動秩序の特徴を持つ。一方1次元ナノ多孔体では,比熱でGL温度と解釈できる温度よりもはるかに低温の1次元フォノン状態で超流動が観測された。これは超流動に伴う吸収を示すことなど,2次元のKosterlitz-Thouless転移で観測されるものと類似の特徴をもつ。最近1次元ナノチューブ状の4He薄膜のXYモデルによる計算が行われ,振り子実験などで,1次元のフォノンゆらぎにより観測される超流動成分が減少する可能性が指摘された。今後1次元フォノン基底状態における超流動を理解するために孔径依存などが重要な知見を与えると考えられる。3Heについては,1次元や3次元ナノ多孔体の細孔壁面を4Heで前もって覆ったあとに3Heを吸着することにより,3Heの高温でのボルツマンガス状態を実現した。これを超低温にすることにより,各細孔のつながりの次元性における3Heフェルミ縮退状態の基底状態を実現できるようになった。これらの縮退状態を超低温比熱やNMRで各次元特有の相関や超流動の探索を行うために,多様な多孔体において細孔直径や4Heでの修飾条件の最適化を調べる実験を行った。また超流動,スリップ現象,固体の超流動性を高周波数の周波数依存で探求するQCM法による装置を完成した。そして2次元4He薄膜のKT転移については超流動渦パラメターを詳細に求めた。
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