研究概要 |
平成19年度は、これまでの研究成果を踏まえ、「強磁性体中のナノスピン構造の電流励起」という観点から研究を推進した。強磁性体を円盤状に加工すると、スピンが試料面内で渦のように回転方向に整列する磁気渦構造が安定化され、その中心には直径数ナノメートルの磁気コアが存在することを、以前に報告した。(Science,289(2000)930)。今回、この磁気渦状態に適切な周波数を持つ交流電流を印加すると、電流と磁気コアの相互作用によって磁気コアがドットの中で回り始めることをシミュレーションによって見出し、強磁性円盤の電気抵抗の交流電流周波数依存性測定を行うことで、この磁気コアの共鳴励起現象を実験的に捉える事に成功した(Phys.Rev.Lett.,97(2006)107204)。さらに、詳細にシミュレーションを行った結果、励起電流を大きくすると、磁気コアの向きが反転する現象を見出した。磁気コア反転の直前に、元の磁気コアとは逆向きのディップが回転運動の内側に現れ、このディップが引き金となって磁気コアが反転することがわかった。この電流による磁気コアの反転を磁気力顕微鏡によって直接観察することに成功した(Nature Materials,6,(2007)269)。
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