研究概要 |
ここ20年来従来のs波超伝導体とは異なる対称性を持つ異方的超伝導体が遷移金属酸化物、有機物、重い電子系化合物において次々と発見されている。最近の研究で異方的超伝導体の超伝導状態は多種多彩で想像していたよりもはるかに興味あるものとなっていることが明らかとなってきた。本年度は異方的超伝導体の典型物質である2次元重い電子系CeRIn_5(R=Co,Rh,Ir)を中心に研究を行った。最近の研究でCeCoIn_5においてFFLO状態の存在が明らかになりつつある。我々はこのFFLO状態を超音波と核磁気共鳴により研究した。特にこのFFLO状態において特異な渦糸状態が形成されていることと、空間的に不均一な準粒子状態が形成されていることを微視的な立場から明らかにした。次にCeCoIn_5では超伝導転移温度以上でランダウのフェルミ流体理論から大きくはずれた振る舞いが観測される。さらに超伝導状態でも準粒子の平均自由行程が大きく増大するという特異な現象が観測されている。我々は準粒子ダイナミクスを詳細に研究するため熱ホール効果を測定し準粒子の平均自由行程を定量的に見積もることに成功した。その結果準粒子は渦糸により強く散乱されていること、そしてこの系は従来の超伝導体では実現が困難であったいわゆるスーパクリーン領域にあることを定量的に示した。さらに我々はCeRIn_5(R=Co,Rh,Ir)の電気抵抗、ホール係数、磁気抵抗、ネルンスト効果に興味を持って研究を行った。この系では圧力により非フェルミ流体からフェルミ流体へ連続的に電子状態を変えることが出来る。我々は非フェルミ流体の領域での輸送係数の温度と磁場依存性は高温超伝導体で観測されていたものとほとんど同じであることを明らかにした。これにより量子臨界点に近い非フェルミ流体の輸送現象の普遍的振る舞いが明らかになった。
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