研究概要 |
1.高濃度Yb添加材料を高強度励起すると,可視から近赤外にわたる超広帯域発光が発生することを見いだし,その機構を探求した。励起光強度に対し非線形に増大する光電流が観測されたことから,不純物準位からなる電荷移動バンドに協同アップコンバージョンで励振されることが推測された。アクティブミラーレーザーにおけるパワースケーリングは,高濃度,薄利得長化による冷却特性向上が有効だが,本現象により限界がある可能性を見いだした。 2.高濃度Yb:YAG thi-diskレーザーにおいて単結晶とセラミックの比較実験を行った。その結果セラミックの方がスロープ効率が高く,20%Yb:YAGで60.6%のスロープ効率が得られた。セラミックの方が不純物が少なく前記非線形損失等がないためと考えられ,高濃度添加に適していると思われる。 3.コンポジット型セラミックの開発を推進し,Yb:YAG/Cr:YAGコンポジットセラミックスによりパルス幅237ps,エネルギー172μJ、尖塔出力0.72MWの自己Qスィッチマイクロチップレーザーを得た。 4.フェムト秒希土類酸化物セラミックレーザーの研究においてカーレンズモード同期に成功し、Yb:Sc_2O_3を用いてパルス幅92fs、出力850mW、光-光変換効率19%を実現した。これはサブ100fsのレーザーの中では出力、効率ともに世界最高である。 5.複数のRe_2O_3セラミックを同一共振器内で用いた複合セラミックレーザーについても研究を進め、Yb:Lu_2O_3と無添加Y_2O_3を同時に用いることにより、非線形効果を制御してカーレンズモード同期を実現し65fs、320mWを得た。更にYb:Y_2O_3とYb:Sc_2O_3を同時に用い、非線形効果と、利得帯域幅の制御を行った複合セラミックレーザーについても成功し、53fs、1Wが得られた。これはYb添加固体レーザー共振器直接発生における世界最短パルス発生である。このような利得帯域の増大は、パワー増幅器においても重要になる。 6.関連研究として,マイクロチップYb:LuAG単結晶レーザー,マイクロチップYb:YSAG単結晶レーザー,Ba(Sn、Zr、Mg、Ta)O_3セラミックスの誘導ラマンレーザー,径偏光固体レーザーの研究を行った。
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