研究概要 |
レーザーダイオード励起フェムト秒Yb添加セラミックレーザーの短パルス化,高出力化研究に取り組んだ。希土類三二酸化物(Re_2O_3,Re=Y,Lu,Sc)セラミックを用いてカーレンズモード同期に成功し,一般的な帯域幅制限を越えたモード同期発振を実現,例えばYb:Sc_2O_3でパルス幅92fs,出力850mWを得た。また複数のセラミックを同一共振器内で用いた複合セラミックレーザーの研究を行った。Yb:Y_2O_3とYb:Sc_2O_3を同時に用い,利得帯域幅の拡大により,53fs,1WというYb系固体レーザー共振器直接発生の世界最短記録を実現した。我々の一連の結果は100fs以下の短パルス領域でパワー,効率共に他材料を凌駕しYb系固体レーザーの性能を一躍向上させた。更にコンポジット型セラミックの開発を推進し,Yb:YAG/Cr:YAGによりパルス幅237ps,エネルギー172μJ,尖塔出力0.72Mwの自己Qスイッチマイクロチップレーザーを実証した。 温度同調高出力アクティブミラーレーザーを念頭に,YAG,Re_2O_3セラミックスの分光特性,熱特性,機械特性を系統的に評価した。誘導放出断面積・準位内熱分布の温度依存性,利得媒質内の温度分布,濃度消光を取り入れた計算モデルにより,温度同調Yb:YAGレーザーの最適エネルギー引き出しの方法を確立した。アクティブミラーのパワースケーリングは高濃度,薄利得長化が有効だが,高濃度Yb添加材料を高強度励起すると,協同アップコンバージョンで電荷移動バンドに励振されて超広帯域発光が発生,限界を与えることを見いだした。高濃度Yb:YAGレーザーにおいて単結晶よりセラミックの方が高効率を示し,20%Yb:YAGで60.6%のスロープ効率が得られた。セラミックの方が不純物が少なく前記非線形損失が少ないためと考えられ,高濃度添加に適していると結論できた。
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