研究分担者 |
岩崎 俊樹 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (80302074)
岡本 創 東北大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (10333783)
児玉 安正 弘前大学, 理工学部, 准教授 (30205421)
内山 明博 気象庁, 気象研究所, 研究室長 (50354460)
山崎 明宏 気象庁, 気象研究所, 主任研究官 (40278106)
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研究概要 |
海洋大気境界層の下層雲は海洋表面のほぼ1/3を覆い,地球の放射収支に大きな影響を及ぼしているが,数値予報モデルや気候モデルでは適正に表現できない.本研究計画は,ヤマセ雲を対象にして,地上・船舶・航空機による総合観測,衛星データ解析,および雲解像モデルによる数値実験を組み合せた総合的研究により,海洋下層雲の形成・変質の機構を解明する.それをもとに低分解能モデルのための雲パラメタリゼーションを開発して,ヤマセ雲の数値予報の改善に寄与することを目的とする. 総合観測に関しては,仙台管区気象台と函館海洋気象台との間で「やませ共同観測」として実施した船舶観測により,ヤマセ現象の発現から消滅に至る間の大気構造およびヤマセ雲の変化の様相を初めて捉えることに成功した.航空機観測によりヤマセ雲の微物理特性の実態が初めて観測され,他の海域における下層雲とほぼ同様の特性であることが示された.また,航空機実測データをもとにNOAA衛星データから抽出された雲物理パラメータを検証し,衛星リモートセンシングは妥当であることを実証した.ついで,NOAA衛星データを用いて北西太平洋域における下層雲特性の広域分布を解析し,領域あるいは空気塊の経歴により雲物理特性が異なることを示した.これらの観測データをもとにヤマセ現象をもたらす空気塊と海洋との熱交換を解析し,ヤマセ雲の形成・変質には大気海洋相互作用が重要な要因であることを確認した.数値モデル化の研究では,観測されたヤマセ現象の再現実験によりモデルの問題点を洗い出し,雲放射スキームや乱流スキームなどを改善した結果,著しい再現性の向上が得られた.水平方向に不均質な雲の放射場を適正に計算するために異なる方法による3次元放射伝達計算スキームを開発した.これらの成果は,従来の気象データ解析に基づくヤマセ研究に対して新しい物理的視点と貴重な知見を与えるものである.
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