研究概要 |
1.肥後変成帯の一部(川越地域)から発見したザクロ石+単斜輝石の鉱物組み合わせを有する岩石の詳細な検討を行った.この岩石が石灰珪質岩を原岩とする中圧型グラニュライトであることを,地質温度圧力計による検討ならびにシュードセクション法による解析に基づいて明らかにした.その形成過程は3つのステージに分けることができ,1番目から2番目のステージへはほぼ等圧の温度上昇過程(約800-900MPa,680℃から820℃)を示している.この岩石は周囲の泥質片麻岩と互層しており,肥後変成岩全体がこのような高圧の変成条件下にあったことを強く示す結果である.肥後変成岩が高圧ないし超高圧の変成条件下にあった可能性はすでにOsanai(1998)によって示唆されているが,彼らの結論は蛇紋岩中の構造岩塊の研究に基づくものであり,片麻岩本体が高圧の変成条件を記録していることが,本研究により明らかになったことに大きな意義がある.この研究成果はMaki et al.(2009)として発表された.まだ超高圧変成岩であるとの確証は得られていないが,その仮説の検証に大きく近づいたと言える.現在も引き続き超高圧変成作用の痕跡を求めて調査研究を継続しているところである. 2.黒瀬川構造帯の蛇紋岩分布地域に構造岩塊として産する含ヒスイ輝石オンファス輝石曹長岩の形成条件を詳細に検討し,この岩石が350oC程度,500MPa - 1.1GPaの温度圧力条件下で形成されたことを明らかにした.これにより九州中部黒瀬川構造帯にも低温高圧型変成岩が含まれることが明確になった.
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