反応進行中の表面の吸着種の集団的振舞を知るには、その表面を顕微鏡でその場観察することが有効である。一方、分子集団の振舞が反応にどのように影響を与えるかを知るには、分子集団のミクロ構造がわかったうえで反応のキネティクスを調べることが重要である。したがって、顕微鏡的手法と反応キネティクスを調べられるX線手法を融合したアプローチが表面反応の理解には極めて有効である。本研究課題では、シンクロトロン放射光X線で表面反応のキネティクスをリアルタイム追跡する実験と温度可変走査型トンネル顕微鏡(STM)で反応種のミクロスコピックな振る舞いを観察する実験の両面からアプローチすることによって、表面反応のメカニズムを深く掘り下げることを目的としている。 本年度はこの研究課題の2年目であり、初年度で立ち上げたSTMを用いて、放射光によって表面状態を調べた金属上のチオール分子による再構成過程を調べた。その結果、Cu(111)面では、チオールの解離によって生じたチオレートが銅原子と結合して表面構造を壊し無秩序な相を作るが、時間と共に、無秩序相の中に一次元的な秩序相が形成され、それらが集合して二次元的な秩序相に変化していく様子を捉えた。 放射光によるマクロなキネティクスとSTMによるミクロな構造変化の情報をつなぐのが反応シミュレーションである。Pt(111)におけるCO酸化反応について、吸着種間相互作用を考慮したkinetic Monte Carlo法による反応シミュレーションによってキネティクスを詳細に検討した。その結果、OとCO単一の反応パスとそれへの吸着種間相互作用によって、複雑なキネティクスを完全に説明できることを示した。
|