研究概要 |
本年度は本課題の最終年度であり,これまで立ち上げた手法を用いて表面過程の原子レベルの機構解明に取り組んだ結果,幾つかの重要な表面過程のミクロメカニズムを明らかにすることができた。その主な例を以下に挙げる。 これまで,Rh(111)面上のNO還元反応(NO+N反応),においてNOダイマーが中間体としての役割を果たすことを明らかにしたが,さらに,その構造と反応機構の関連について検討を進めた。その結果,化学吸着したNO層の上に形成されるNOダイマー中間体は,金属表面上で形成されるNOダイマーのようにN-O結合を表面に寝かせたような構造ではなく,N-N結合を表面に寝かせたような特異な構造をとることが分かった。さらにこの構造をとったまま,表面のN原子に近づくと,電子吸引的なNOダイマーが電子リッチなN原子を攻撃してコンプレックスを作ることが可能であり,このコンプレックスから挿入,置換反応を経てN20とNOが生成する反応機構が明らかとなった。 また,Rh(111)上でのN原子と水素ガスからのアンモニア生成反応について詳細な皮応機構の検討を行った。安定中間体としてNHが生成し,しかも二次元的なアイランドを作ることが分かった。このアイランドの縁ではN原子への分解が起こり,反応進行条件下でNHアイランドの生成と分解は平衡状態になっている。このNHアイランド全体でアンモニア生成反応が起こっていることが分かった。この反応の中間体には諸説あったが,今回,初めてその描像が明らかになった。 さらに,Rt(111)上でできるH_20とOHの二次元ネットワークで起こるプロトン移動過程についても調べ,H_20から隣のOHに移動する単純な過程の他に,H20から隣のH_2Oに移動して一旦H_30を形成してからさらに隣のOHに移る過程があることを見出し,これらの時間スケールがナノ秒オーダーであることを明らかにした。
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