光電子角度分布を分子固定系で観測する新しい手法として、分子の回転波束を生成し異なるアラインメントの分子から光電子角度分布を測定する手法について検討した。実験ではNO分子を第一のフェムト秒レーザーによってX状態からA状態に励起し、時間遅延させた第二のフェムト秒レーザーによってイオン化し、光電子角度分布を画像測定した。イオン化波長を変化させることで光電子の余剰エネルギーを60meVから1.3eVまで変化させ、遅延時間を約200fsの間隔で変化させて測定した。これらの測定から、各光電子エネルギーにおける異方性因子β2とβ4を決定した。これらの値から光イオン化動力学因子を抽出するために、光電子散乱外交波を(1<3)として部分波展開し、異方性因子を最小二乗解析した。その際に、フィッティングパラメータを少なくする目的で、部分波の動力学的位相シフトをNOの高励起Rydberg状態の多チャンネル量子欠損理論からの推定値に置き換えた。また、部分波に対する遷移双極子モーメントが光電子エネルギーに一時に依存するという過程を取り入れた。このような仮定の下で、遷移双極子モーメントを決定した。一方、このようにして決定された動力学因子が妥当か否かを検討するために、an initio多チャンネル量子欠損理論とSchwinger変分計算の専門家と共同研究を行い、理論値の比較を行った。その結果、後者とは非常に良い一致を得たが前者とはかなりのずれが見いだされた。現在、この不一致の原因を先ら家にすると共に、実験の誤差の範囲を定量的に見積もる作業を行っている。また、光イオン化の積分断面積を測定することが最小自乗解析を行う上で必要と判断されたため、その準備を行っている。
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