研究概要 |
本年度は以下のようにナノ分子や機能性分子の電子デバイスへの応用を志向して研究を行った.以下に主な成果を列記する. 1.ナノ共役オリゴマーの光電変換材料への応用:昨年度,分子内分極の効果をもつシアノプロペン酸アンカーを導入したオリゴチオフェン誘導体を用いた色素増感型太陽電池において光電変換効率3.5%を達成したが,本年度はこれをさらに検討して変換効率4%程度まで上昇することに成功した.さらに,分子内分極の効果を強めることを意図し,双生イオン構造を安定化できる材料を設計・合成した.これらの新材料の太陽電池での予備的な評価では光電変換特性は示すものの効率は高くないことが明らかになっている. 2.巨大分子系の開発と応用:既に本研究において,新規な可溶性チオフェン縮合ポルフィラジンを開発しているが,今年度,更なる共役拡張を意図してフェニル基の導入やシアノプロペン酸残基の導入を行った.フェニル誘導体では自己組織化集合体を形成する傾向が見られ,新たなナノ集合体材料となる可能性が確認できた. 3.自己組織可能を有するナノ分子の有機電界効果トランジスタへの応用:縮合多環系に長鎖アルキル基を導入したナノ分子が溶液の塗布により基板上で自己組織化した層状構造体を形成すること見出した.これをチャネルに用いた薄膜トランジスタでは縮合多環構造により特性が大きく変化するものの,最高で溶液プロセス有機トランジスタとしては最高の2.7cm^2/Vsの移動度をもつことが分かった. 4.ナノサイズオリゴマーの青色発光と有機ELへの応用:本研究で開発した,オリゴ(パラフェニレンエチニレン)では分子集合体(薄膜)においても強い青色蛍光が見られるだけでなく,長波長シフトも小さい.この材料を用いて単層型有機ELに作製したところ,青色の電界発光が確認された.
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