1.タイムプレートを用いた波長変換器を作成し、チタンサファイヤ再生増殖器からの近赤外フェムト秒パルス(波長750nm〜850nm、<2.5mJ、1kHz、130fs)を紫外フェムト秒パルス(250nm〜280nm、<0.2mJ、〜200fs)へと高効率で変換するシステムを構築した。この紫外フェムト秒パルスを励起光源として高圧水素中で高次の誘導ラマン散乱光および反ストークスを発生させ、本研究の最終目標となる数フェムト秒パルスを発生させるために必要なスペクトル領域の確保に成功した。 2.過渡的誘導ラマン散乱により励起した分子コヒーレント運動によって、近紫外超短パルスの時間幅圧縮に成功した。約200fsの入射パルスから、分散の制御なしに最短24fsのパルス幅を有するパルス列を発生させた。発生した超短パルスをSD-FROG法によって解析し、2種類の独立に制御可能な周波数シャープを有していることを明らかにした。この結果より、入射前後の分散補正により、10fsを切るような超短パルスの発生の可能性を示した。 3.質量分析計を検出器とした自己相関計測系を構築し、一酸化窒素の2光子イオン化による非線形応答を用いた新しい深紫外超短パルス計測装置を開発した。この装置を用いて、波長260nm・パルス幅200fsのフーリエ限界及びチャープパルスの時間波形計測に成功した。これによって、数フェムト秒の分子の挙動を精密に分析できる新しい計測装置への発展の礎を築いた。 4.極限の超短パルス応用に向けた基礎実験として、紫外フェムト秒パルスを用いた超音速分子ジェット/多光子イオン化質量分析法により、ダイオキシン化合物の極微量分析を行った。結果として、毒性を有する5塩素化ダイオキシン化合物において、0.5pgを下回る検出感度での分析に成功し、本手法の短励起寿命物質の高感度分析への有用性を立証した。
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