当研究室で薬物-DNA相互作用の解析に用いてきたd(CGCGAATTGCGCCC)とTTに(6-4)光産物あるいはシクロブタンピリミジンダイマーを有するもの、および5'末端にビオチンを付けた相補鎖を合成し、2本鎖を形成させた後、ストレプトアビジンのセンサーチップ上に固定化した。これを用いて最初に、CDスペクトルにより解析してきたdistamycin Aの結合を表面プラズモン共鳴により調べた。流速、温度、固定化量、薬物濃度、溶液組成等の条件を検討した結果、まず、正しい形状のセンサーグラムを得るためには界面活性剤を加える必要があることがわかった。次に、distamycin Aの濃度が高いと非特異的な結合が顕著であったが、固定化量を1000RU程度に抑えて低濃度(30nMまで)で測定することによりCDの結果を少なくとも定性的には再現することができた。しかし、最大RU値と分子量からstoichiometryを求めると、CDで求めた結果(損傷のない2本鎖に対して1、(6-4)光産物を有する2本鎖に対して2)と全く逆の値となった。定量的な実験を可能にするためにはさらに検討が必要であるが、表面プラズモン共鳴法を用いて結合の特異性を調べることは可能となり、distamycin Aについてはチミングリコールを有するDNAにも結合することを明らかにした。アミノグリコシド系抗生物質については入手可能な11種類を購入して結合を調べたが、ほとんどの化合物が本来のターゲットであるRNAだけでなくDNAに対してもある程度の親和性を示すことがわかった。これらの中のいくつかは(6-4)光産物に対する若干の選択性を示し、特にkanamycin Aは損傷の有無による差が比較的大きいため今後の研究対象として有力な候補である。
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