研究課題
基盤研究(A)
16S rRNAのAサイトに結合するアミノグリコシド系抗生物質は、核酸構造の類似性から、(6-4)光産物を有するDNAにも結合することが期待された。我々は11種類のアミノグリコシドについて、表面プラズモン共鳴を測定することによりDNAに対する結合を解析した。その結果、neomycin, paromomycin, apramycinについて比較的小さい解離定数が得られたが、損傷の有無で有意な差が認められなかった。当初、親和性は低いながらkanamycin Aで損傷DNAに対する若干の選択性が見られたが、詳細な解析の結果、最初に用いた14塩基対の2本鎖では測定中にDNAの解離が起こり、この薬物は2本鎖より1本鎖DNAに対して少し高い親和性を持つためであることがわかった。アミノグリコシド系抗生物質で期待どおりの結果が得られなかったのはDNAとRNAで基本構造が違うためであると考えられたので、「(6-4)光産物を有するDNA」により近い構造の「バルジを有するDNA」に結合して鎖切断を起こすneocarzinostatinの反応を調べてみたが、損傷DNAでは鎖切断は認められなかった。次に、損傷の近傍ではなく(6-4)光産物の化学構造を直接認識する分子を探すこととし、(6-4)光産物中で直線上に並んでいる3つの水素結合のアクセプターに相互作用しうる3種類のアミンを試したが、結合は検出されなかった。別の研究から(6-4)光産物中には分子内水素結合が存在することが明らかになり、これが結合を阻害していると考えられる。これらの研究と同時に、以前に結合が検出されたdistamycin Aの認識機構を詳細に解析した結果、この化合物は(6-4)光産物を有するDNAを特異的に認識しているのではなく、損傷部位の塩基対の化学構造を認識しており、(6-4)光産物は偶然にその条件を満たすことが明らかになった。
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Bioorganic and Medicinal Chemistry Vol.16
ページ: 164-170
Nucleic Acids Research Vol.34
ページ: 313-321