研究概要 |
本研究では、独自開発の電圧印加非接触原子間力顕微鏡法/分光法(Bias nc-AFM/S)を活用して固体表面上の電子・光機能ナノ構造の原子・分子配列、結合・電子状態、基板との界面電子物性を原子スケールで解析し、本手法を発展させることを目的とした.nc-AFSの結果は、二つの凝縮系物体を極接近させ印加電圧を変化させて静電エネルギー的にチューニングすることで、それぞれの表面電子準位からなる共鳴状態(共有結合)を形成できることを示した.また、nc-AFSに基づく力と電流の同時測定は、近接した2物体間のトンネル障壁の崩壊過程を評価し、電子伝導と相互作用力の相関を解析できることを示唆した.そこでさらに電流と力の高感度検出のために探針先端の調製を進めた.AFMカンチレバーのSi探針先端を清浄化し、Si, Geを接触または蒸着し、加熱電界印加して、ナノピラーを成長させ、SEM, SAM, TEMなどで解析した.また、水晶振動子力センサーを構築し、その探針材料としてPt-Ir線を電解研磨で先鋭化し、その先端にPt系ナノピラーが成長できるようにした.試料としてSi(111)-7x7にπ共役系分子4,4"-diamino-p-terphenyl(DAT)を蒸着して観察し、DATの蒸着量を変化させてXPSで電子状態解析した.この材料は、1,4-bis(4-formylstyryl)benzene(BFSE)を蒸着することによってDAT末端のアミノ基と交互に重合反応させ、制御された分子長をもつπ共役分子をSi基板に垂直配向できる可能性をもつ.DATの吸着位置は7x7単位胞の積層欠陥に優先吸着し、分子両端の2つのNH_3分子のうち一方がSi基板と結合し、他端が自由末端となっている証拠を得た.また、Si原子と結合したアミノ基部位で電子状態が基板に対して電導状態であることがわかった.
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