研究課題
基盤研究(A)
近年、環境汚染ガスによる地球環境問題が注目されており、工場や自動車からの排出ガスの規制が懸案の課題になるに伴い、汚染ガス検知機器の分析限界の向上が要求されている。このような要請に応えるためには、従来の半導体式ガスセンサーではなく、センシングのコア材料として、実効表面積の大きいカーボンナノチューブ(CNT)を応用することが有望となる。そこで、本研究では、ガス吸着機構の表面科学的な解明にもとづき、CNTによる極微量ガスセンシング技術を開拓することを目的とした。特筆すべき結果として、以下の新しい事実が得られた。(1)熱化学気相成長法により、単層CNTを櫛形電極付きアルミナ基板上に直接成長させた単層CNT薄膜ガスセンサーを開発し、NO_2などの酸化性ガスに対しppbオーダーの超高感度、室温動作、高スループット作製、高速応答・回復など、優れたセンシング特性をもつことを実証した。さらに、特定のガス種の検知に向けて、触媒金属(Pt)を単層CNT表面に修飾したガスセンサーを作製し、還元性ガスであるCOに対して、1ppmの極微量検知に成功した。(2)単層CNTへのガス吸着機構を解明するために、大気中での外乱を避け、規定された条件下(真空中)で、NO_2に対する応答特性を評価した結果、大気中での場合と比べて、センサー感度がおよそ1.4倍高くなることがわかった。さらに、0.1ppbオーダーの濃度まで検知可能であった。この要因として、真空中では検知対象ガス以外のガス分子の影響を受けにくく、単層CNTの表面が清浄であるため、単層CNT薄膜ガスセンサー本来の性能が得られたものと考えられる。
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