研究概要 |
前年度までの研究では、官能基修飾微粒子を分散させた超純水を加工液として用いる方法を新たに提案し、実用レベルの平滑表面をSiウエハ上に創成することに成功した。さらに、電極間の電界分布や加工現象の第一原理分子動力学シミュレーションを行い、本加工法の加工機構を明らかにすることができた。そこで、今年度(最終年度)の研究では、官能基修飾微粒子を用いた対抗電極形状の転写加工の可能性について検討した。さらに、今後、水分子を効率的に解離することが可能な修飾表面、表面ナノ構造あるいは官能基を新規に設計・開発する必要があるものと考え、分子鎖やナノ構造体の電子輸送シミュレーションに着目し、シミュレーション手法に関する基礎研究とシミュレーションプログラムの開発を試みた。その結果、以下に示す成果を得た。 (1)官能基修飾微粒子を分散させた超純水を用いる電気化学加工法を、Cu,Al,WなどSi以外の材料に適用し表面創成実験を行った結果、粒子径を大きくすることで対抗電極形状の転写性能が向上することを見出した。この結果により、平滑表面だけでなく、3次元構造の創成加工も可能であることがわかった。 (2)水分子を解離する機能を有する分子鎖やナノスケール構造を予測し、設計・開発することを目的として、時間依存シュレディンガー方程式を用いた電子輸送シミュレーション手法の研究、およびシミュレーションプログラムの開発を行った。 (3)昨年度導入したクラスターコンピュータシステムに、さらにクラスターエレメントを追加購入し、ナノ構造体モデルの電子輸送シミュレーションを行った。その結果、多様な形状のナノ構造体に対する電子輸送特性を極めて効率的にシミュレーションすることが可能であることが明らかになり、触媒機能表面の設計・開発に利用可能な第一原理電子輸送特性シミュレーション手法を確立することができた。
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