研究概要 |
機械要素の微小化に伴い、また精確な動作制御の必要性から、厚さ数ナノメータの薄い潤滑膜が求められるようになってきた。しかし,潤滑膜には固体の耐久性を高める役割を果たす固定分子層,および固体間の摩擦を低減させる役割を果たす流動分子層のいずれも重要であり,これらを望ましい組合せで塗布しなくてはならない。本研究では、潤滑剤固定に最適な表面改質方法を開発し,さらに連続して固定分子層および流動分子層の最適塗布方法を開発することを目的とする。昨年度は、表面改質のためにPVD(Physical vapor deposition)装置を導入したが、本年度はさらに密着強度を高めるためにPSII電源を導入し、また表面膜を複合化するためにスパッタシステムを導入した。これにより、鉄系基材の表面にシリコンと高強度DLC膜の複合化ができた。この装置を用いて複合膜を作成し、XPS装置による成分分析、ナノインデンターによる硬さ試験、スクラッチ試験機による剥離強度試験を行った。そして、成膜時のアノード電流、バイアス電圧の変化による膜のトライボロジー特性を評価した。 また、成膜速度も十分満足のいくものであった。また,自己組織化単分子膜(Self Assembled Monolayer, SAM)を用いたナノ潤滑膜の開発に関しては,昨年度に続いて、固体資料にDLCを蒸着したもの,窒素含有DLCを蒸着したもの,シリコン含有DLCを蒸着したものに,有機単分子(CF_3(CF2)_8CH_2OH)を,浸漬法および真空蒸着法で固定したものの評価を行ってきた。 また、分子動力学法を用いたシミュレーションでは、より精度の高いシミュレーションを目指して、Brener報によるポテンシャル作成を行ってきた。現在さらに精度を高めるために、sp2.sp3結合の割合まで予測できるポテンシャルを作成中である。
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