研究概要 |
(1)高抵抗バリア入り低損失高温超電導線材の高特性化に関する研究 前年度の成果を踏まえて,超電導フィラメント間にCa_2CuO_3粉末にBi_2Sr_2Ca_2Cu_3O_x(Bi2212)粉末を少量混合したものを高抵抗バリア層として導入した低損失線材の高特性化に関する研究を行なった。作製した線材の断面観察結果より,超電導芯の断線や形状の乱れは殆どなく,バリア層は所々切れている箇所もあるが概ね芯間に介在していることが確認された。バリア層の導入に伴う臨界電流密度(J_c)の劣化は10%以下に抑制されており,数mの線材長全域に渡って10^4A/cm^2を超える均一な売値を得ることができた。77K,平行横磁界下での交流特性の評価結果より,損失低減における重要なパラメータの一つである芯間横断抵抗率(ρ_t)はバリア層の導入により6〜7倍程度向上していることが示唆された。更に,実際の送電ケーブル応用時に想定される最大経験磁界(振幅値)に近い50Hz,50mTの平行横磁界を印加した際に,バリア線材の磁化損失は通常線材と比較して1/4程度に低減されていることを確認した。 (2)銀合金シース高温超電導線材の高特性化に関する研究 低損失線材の高強度化に向けて銀-銅合金および銀-マグネシウム合金を被覆母材とする線材を作製し,純銀シース線材と同等の臨界電流密度(J_c)を得るためのプロセス最適化に関する検討を行った。銀-銅合金シース線材においては,(Sr,Ca)-Cu-O相と呼ばれる不純物が一次焼成の初期段階において超電導フィラメント内において生成・粗大化してしまうことがJ_cの大幅な劣化(1/3程度)を主要因であることが判明した。この問題を解決するために,(1)超電導原料粉の組成調整,(2)銀-銅合金シースの事前酸化熱処理を行なうことにより純銀シース線材と同程度のJ_c=2.0×10^4A/cm^2を達成することができた。一方,銀-マグネシウム合金線材においては,フィラメント内の超電導結晶粒の配向性が純銀シース線材よりも劣っており,これが高J_c化を妨げる主要因となっていることが判明した。この問題を解決するために,通常行なう圧延-焼成の反復工程の回数および各焼成時間の組み合わせを制御することで,J_c=1.4×10^4A/cm^2を達成することができた。
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