研究概要 |
(1)高抵抗バりア導入銀シース高温超電導線材の作製と特性評価 超電導芯間に高抵抗酸化物をバリア材として導入し,芯間抵抗を向上させることにより損失低減を図るための基礎的研究を行った。バリア導入法として,(1)銀シース単芯線表面にバリア層を塗布し,これを束ねて多芯化して加工、焼成を施す方法,(2)バリア層を延性金属として導入加工した後,酸化処理により高抵抗材に変える方法を検討した。とくに前者(1)の場合,Ca_2CuO_3をバリア材として用いたとき,77K,OTで最大Jc=1.8×10^4A/cm_2,数m長線材でも線材全長に渡り10^4A/cm_2以上の良好、均一なJc特性が得られ,本バリア材の長尺化に対する有効性が示された。また交流特性の測定結果より,バリア導入により横断抵抗率(ρ_t)は6〜7倍向上することが示された。加えて,平行横磁界印加によるバリア線材の磁化損失値は,非バリア線材と比べ1/3程度に低減することが示された。 (2)数値解析による円筒集合導体局辺の交流通電時の電界分布と損失測定精度の評価 銀シース超電導テープ線材を素線とする高温超電導ケーブルの交流通電損失を電気的に測定する場合,損失は通電電流と導体に取り付けた電圧端子で検出する損失電界の積により決定される。損失測定を精度良く行なうにはケーブル近傍の損失電界分布を把握することが重要となる。これを踏まえて,テープ形状の超電導線材を用いたケーブル周辺の損失電界分布を数値解析により評価した。導体近傍の損失電界分布は導体構造に依存して複雑に変化し,テープ素線幅広面からテープ幅程度離れた位置でほぼ一定となることが判明した。ゆえに,パワーケーブルの通電損失を精度良く測定するには,テープ素線幅広面からテープ幅程度離れた位置で損失電界を測定する必要がある。
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